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“名ばかり管理職”問題−マクドナルド判決のその後はどうなったのか。
◆マクドナルド判決後の同社関連の動き
日本マクドナルドが直営店の店長を管理職とみなして残業代を支払っていないのは違法だとして、埼玉県内の男性店長(46歳)が未払い残業代など約1,350万円の支払いを求めていた訴訟において、1月下旬に東京地裁は「店長の職務内容から管理職とはいえない」
として同社に約755万円の支払いを命じる判決を下し、新聞やテレビなどで大きく報道されました。
その後、マクドナルドの元店長3人が残業代の支払いを求めて東京地裁へ提訴したことも明らかとなっており、さらには別の元店長数人も訴訟提起を検討しているとのことで、
今後同様の動きが広がっていけば、約1,700人の店長を抱えている同社の経営に大きく影響を与えかねないと思われます。
◆他の業界でも制度見直しの動きが
他の業界でも、上記判決の影響を受けてか、様々な動きがみられました。
2月上旬に、コンビニエンスストア最大手のセブンイレブン・ジャパンは、管理職と位置付けている直営店の店長に対して3月から残業代を支払う方針を示しました。
大手小売業や外食業で制度を見直したのは、マクドナルドに残業代の支払いを命じた東京地裁の判決後、初めてのことだそうです。
また、2月下旬には、東日本でレストランチェーン店を運営するカルラも、店長の職務内容を洗い直して管理職から外し、手当等を変更して残業代を支払うことを決定しました。
これもマクドナルド判決を受けたものとみられており、同社以外にも追随する外食企業が出てくる可能性があるかもしれません。
◆まだまだ出てくる!?「名ばかり管理職」「偽装管理職」
労働者や労働組合の権利擁護活動を行っている日本労働弁護団では、2月中旬に「名ばかり管理職」(十分な裁量や手当がない肩書きだけの管理職)に関する電話相談を初めて実施したところ、1日だけで130件以上の相談が寄せられたそうです。
・「管理職なのに部下がまったくいない」
・「高卒1年目ですぐに管理職にさせられた」
・「遅刻をすると減給されてしまう」
・「管理職候補だという理由だけで残業代が支払われない」
などといった事例があったようです。
「名ばかり管理職」「偽装管理職」の問題はたいへん根が深く、まだまだ終わらないようです。
◆今回の訴訟では、
「店長が管理職として経営者と一体的な立場にあり、出退勤の自由や賃金などで一般労働者に比べて優遇されているか否か」が争点になりました。
判決は、
(1)店長の権限が店舗内に限られる
(2)営業の必要上相当の長時間労働が必要となり勤務時間の自己決定権はない、
(3)年収が管理職の待遇としては不十分、との理由から、
「店長は権限や処遇からみても管理職とはいえない」としました。
◆ 管理監督者の明確な定義
厚生労働省の通達によると、管理監督者に当たるかは、
(1)労務管理などで経営側と一体の立場にあるか、
(2)賃金や勤務形態が優遇されているか等の、
職務・職責・待遇を基準として判断されます。
明確な線引きがしにくく、総合的な判断が必要になります。
名目的に就業規則や社内規程に定めるだけではなく、現実的に管理監督者といえるかどうか、大局的な立場に立った判断が必要とされているといえます。
(記事協力:藤社労士)